【解説1】日本の原発と地震

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日本の原発・たまっていく放射能

地震と原発事故 地震に弱い原子力:崩壊熱 恐ろしい冷却水喪失

日本の原発・たまっていく放射能

  日本の原子力発電所は1999年7月現在で52基が稼動しています。(図1)

図1

  原子炉を運転すると、莫大な量の人工放射能が生じます。1年間に、長崎型原爆1万発を作れるプルトニウムと、広島型原爆4万発分の核分裂生成物(いわゆる死の灰)がつくられます。これらの人工放射能が、年々蓄積されていきます。

  100万kwの原子炉1基が持っている放射能は、運転停止の1日後でも、1人あたり許容量の2000兆倍になります。これは、人間をふくむ生物にとって、たいへんな脅威です。

  プルトニウムを吸い込むと、わずか100万分の1グラムでもアルファ線によって肺ガンを起こします。プルトニウムは、放射能が半減するのに2万4千年を要する、超長寿命の人工放射能です。

  核分裂生成物の放射能の強さは、原子炉の停止直後で、もとのウラン燃料の1億倍にもなります。このうち、短寿命の放射能は多量の崩壊熱を発生し、原発特有の炉心溶融(メルトダウン)事故の原因となります。

  また核分裂生成物は、長寿命の放射能のため、天然のウラン鉱石の放射能レベルまで下がるのにも10万年かかります。これは、人間が管理できる時間を超えています。
  そこで、地下に埋めこむための研究が進められています。(「地層処分」図2)

図2

  母なる大地に埋め捨てにしてよいのでしょうか?胸が痛みます。
  
発生源の原発の運転が続くかぎり、放射能は増え続けていきます。


地震と原発事故

  日本列島は現在の地球上で最も地殻変動が活発な変動帯です。
  
世界の地震の10%は日本列島とその周辺海域で起こっています(図3)

図3

  1978年、国の地震予知連絡会は、近い将来に地震発生が予想される地域を、特定観測地域・観測強化地域に指定しました。(図4)

  日本の原発のうち26基は、特定観測地域・観測強化地域にあります。また、若狭湾沿岸の14基も、その至近にあります。これらを合わせると、日本の原発の77%になります。

図4

  世界の原発が運転を開始していらい、まだ原発が大地震にみまわれた例はありません。日本の原発がその第1号になるのでしょうか。
  東海地震の震源直上の「浜岡」、日本海側の「島根」、四国の中央構造線ぞいの「伊方」は、現在地震発生が懸念されている地域です。若狭湾沿岸、信越変動帯に近い「柏崎」、三陸の「女川」も要注意です。
 
  原発が大地震に会ったらどうなるでしょうか。“実験”の日は、刻々と近づいています。


地震に弱い原子力:崩壊熱

  原子力の本質的な弱点として、人工放射能が出す崩壊熱があります。原子炉の燃料は、崩壊熱のため、停止後も大量に発熱し続けます。そのため、原子炉が地震で止まっても、崩壊熱を取り除くため、冷却し続けなければなりません。

  アメリカや日本の原子炉では、大量の冷却水を回しています。(図5)
配管が地震などで破損し、冷却水が大量に失われると、メルトダウン(炉心溶融)という、致命的な事故になります。

図5

  崩壊熱とは原子力に特有な現象です。原子力はウラン(プルトニウム)を人工的に壊してエネルギーを放出させます。壊されたウラン(プルトニウム)の破片が人工放射能になります。その強さは、もとのウラン燃料の1億倍にもなります。

  作られた放射能は自然に別の核種に変化していきます。やがてそれ以上変化しない非放射性物質になります。この過程で崩壊熱と呼ばれる大量の熱を出します。

崩壊熱は、原発を運転していようが止めようが無関係に発生し、止めることも減らすこともできません。放射能の寿命は一瞬のものから数十億年のものまで、種類によってちがいます。

時間あたりで見れば、短寿命の放射能が出す熱はきわめて大量で、原子炉停止直後は電気出力100万kWの原子炉1基で21万kwに達します。1時間後で4万kw、12時間後で2万kw、1日後で1万7千kw、の熱を出し続けます。


恐ろしい冷却水喪失

  アメリカ・日本型の原子炉では、燃料が密集しています。そのため発生する崩壊熱の逃げ場がありません。大口径の配管が破れると、冷却水は沸騰して失われてしまいます。冷却水がすべて失われると、核分裂反応は止まります。

  けれども崩壊熱による発熱のため、燃料集合体の温度は10〜60分後には数千度になり、溶け落ちます。これを、炉心溶融(メルトダウン)といいます。(図6)

  30〜120分後には原子炉の鋼鉄も溶かしてしまいます。溶け落ちた燃料が水に触れると水蒸気爆発を起こします。原子炉格納容器が破壊されればチェルノヴィリを上回る大事故になります。

図6

  1979年、アメリカのスリーマイル島原発2号炉で起きた事故は、給水ポンプの停止とバルブが閉じなかったことが原因で冷却水が失われ、燃料の50%以上が溶け落ちました。
  炉外の配管には損傷がなかったため、数日間の悪戦苦闘のすえ冷却水再注入に成功し、原子炉の溶融破壊はまぬがれました。

  この事故以前は、炉心溶融事故は起こり得ないと主張されていたのです。

  この事故以降、アメリカではすべての原発建設が中止されました。廃炉によって、アメリカの原子炉の数は減っています。

冷却水で冷やさなくてもメルトダウンを起こさなくなるまでには最低でも3ヶ月かかると言われています。(1年という説もあります。)

崩壊熱について、中部電力のHPでは原子炉を停止後、「1秒後には定格出力で運転する際に発生する熱量の約7%,1日後には1%以下」になるとしか説明されていません。これだけを読むと、停止させればメルトダウンの可能性は低いと誤解するのは当然で、説明が極めて不十分と言わざるを得ません。

詐欺まがいの説明をする中電の根本的な基本姿勢が問われます。



もっと詳しくはこのURLをご参照ください。
http://www.osk.janis.or.jp/~kazkawa/nuclear00.html


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