記者会見(2002年5月20日)での発言

記者会見

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2002年5月20日記者会見 参議院議員会館2時半より (以下は発言順に掲載)

村田 光平 氏

 
 今回の浜岡の運転停止を求める声明は、元参議院議員である水野先生と一緒にまとめました。下河辺淳先生は原発立地の責任を負う国土庁の元事務次官を務められた立場から連名に参加しておられます。相馬雪香先生は、難民を助ける会の会長も務めておられますが、人道主義の立場から連名に参加しておられます。長谷川先生は200以上の論文を書いておられ、アメリカの物理学会プラズマ部会長を務められた方で、核融合に反対しており、今回の連名にも協力頂く次第でございます。

 この声明は日本における市民社会の発展ぶりを象徴しております。声明は、政府及び企業と対立するものではありません。あらゆる立場を超えているものであります。原発問題に関する困難な政策転換に関し、市民側からその環境作りに協力することを明白にしております。

 下河辺元国土庁事務次官が名を連ね、元地震予知連会長の茂木清夫氏も声明に目を通
しておられるので、この声明文の正しさには確信を持っております。

 今回の記者会見は、大変意味のあるものであります。原発問題に触れることをタブー視する風潮がありますが、これをなくさない限り、日本の壊滅がもたらされます。今後はマスコミの方にもこの風潮を早急に取り除くよう尽力してもらうことをお願いします。世論を喚起すれば、日本国民は正しい判断を下すはずです。

 まず、原子力に関する3つの基本的事実を挙げさせて頂きます。

 第一に、「高い、危ない、不可欠ではない」ということです。これは、専門家でも否定できない事実であります。

 第二に、核技術は民事も軍事も不可分で、核拡散は核の民事利用によりもたらされるということです。

 第三に、核廃棄物の問題は解決されておらず、未来の世代に対し、余りにも無責任であるということです。

 一つ目の危険性についてですが、日本には事故処理体制がありません。90万の動員をしたロシアとは違います。また、スウェーデンでは、16歳以上の国民に、原子力事故発生の際、事故鎮圧に協力する義務が課されてありますが、日本にはこのような立法がありません。また、有効なテロ対策も存在しません。地震対策からすると53機の原発はすべて失格であると言っている有力な専門家もいます。原発の持つ巨大技術の危険性を封じ込める事は人間の限界を超えています。日本のみでなく世界をも破壊する可能性も否定できません。そして今、世界には36カ国に430基以上の原発が有ります。これはどう考えても倫理観、責任感、正義感の欠如と断じざるを得ません。

 浜岡原発の運転停止は、事故の可能性に加え、巨大地震が迫りつつあるということ、そして同時多発テロにより、原発が防護不可能であることが示されたのを鑑みれば、誠に急を要する課題であります。

 さらに付言すれば、原発はエネルギーの問題であるので、未来の世代を全く無視する経済学に立脚する経済至上主義を見直し、文明のあり方そのものについて見直し、考えていくことが求められます。

 今、日本では市民社会が大きく育つ兆しが見られます。これは時代を決める要因が変化してきていることに呼応するものです。即ち、知性ではなく感性へ、権力から哲学へ、技術から直観へ、そして専門家から市民への重要性の転換です。

 この記者会見が、原発の危険性に触れると、異端者扱いされ、不利益をこうむるという風潮を破る第一歩となることを切に願うものです。
 

錦織 俊郎 氏


 私は島根県出身で、以前日本高温ソーラー熱利用協会をやっておりました。現在世界では、石油、天然ガス、ウラン、石炭を利用していますが、石炭を除いて他のものは40、50年くらいで使用できなくなります。また、実際に存在してもコスト的に合わなくなってしまうでしょう。石炭のみが200年以上できますが、CO2や窒素化合物、硫黄化合物の出てくる量が多くなってしまいます。
 
 そこで石炭に太陽熱を供給し、メタノール、ジメチルエーテルをつくることによって、公害の少ない燃料に変えて使用するというのが、我々協会の考え方です(注:現在協会自体は解散されたが、本技術開発は進行中である)。メタノール、ジメチルエーテルとも炭素原子を含んでいますが、CO2は出ても発生量は少なく、天然ガスと同程度であります。この技術の研究開発は進展しており、運転は10年先を見越しています。成功すればCO2が少なく、石油天然ガスに頼らなくてよくなります。ただ、炭酸ガスを発生するので、この計画は究極の目標ではありません。
 
 将来的には、燃料電池を使って行けばよいと考えています。また、超伝導という技術も完成すれば、遠隔で発電したものをロスなしに電力使用現場までもってくることができます。

 しかし、これらの技術が確立するまでのソフトランディングとして、上記の計画に精力を注いでいます。成功すれば、原子力をなくしても日本のエネルギーは確保できます。

 原発問題は大きな問題をはらんでいます。かつてアメリカのリリエンソールという原爆開発の学者が、「原発の管理は専門家でなく非専門家でなければならない。」と言いました。そして原爆の開発の10年後に原発が開発されました。

 浜岡原発は地震の可能性が高まっているこの時期に閉鎖すべきであります。同時に今、代替エネルギーも考えるべきです。

 私自身、20世紀の日本で働き続けてきましたが、日本は、精神的なものを多く失ったと感じます。残念なことであります。日本が世界で生き残るすべは、道徳と科学技術であると思います。道徳は復興するべきであり、科学技術は文明文化を支えるべきものでなければなりません。21世紀は人間の理性が問われるべきです。

水野 誠一 氏

 
 私は昨年7月に県知事選に出ましたが、最大の目的は、実は空港建設問題よりも、東海地震の真ん中に位置する原子炉運転停止を念頭に置いていました。選挙が終わってからもこの思いは強く持っています。

 私は村田先生とは違い、今まで過渡期的なものとしての原子力には、容認の立場を取ってきました。しかし、核燃サイクルが完了しないという問題や、廃棄物処理のできないトイレのないマンションと言われている原子力発電に疑問を持ってきています。
 
 浜岡に関しては朝日新聞の「私の視点」に書いたことがあります。地震を仮に予知できたとして、それで炉を止めても十分ではないという問題です。原子炉は崩壊熱を冷やすのに、3ヶ月かかります。この崩壊熱を冷やすという部分も、冷却装置が働ければ可能な話でありますが、昨年11月には、このかなめのECCSという緊急炉心冷却システムが破断事故を起こしました。議員のときに何度も通産省や中電の人に、浜岡原発は大丈夫かと聞いてきた時、「ECCSがあるから大丈夫だ。」といわれてきたというのにもかかわらずでした。さらに、去年の夏から冷却水の原子炉からの漏れがあったというのもわかりました。だいたい、つくった当初は30年という寿命の原子炉が、60年いけるのではないかという理由の根拠もわかりません。
 
 このような事態では、原発容認派の私でも、咎めなければならないと思うようになりました。つまり、私の立場は、主義主張を超えた、「日本の安全をいかに確保するか」という一点であります。3,4号炉も危ないと思います。東海地震は間近に迫っているのです。しかも東海地震の規模は大きく、そのメカニズムはだんだんわかってきている段階なのです。経済産業省の人にも、「もし事故がおきたら、どうするのか?もし原子力を本当に続けていきたいならここで事故を起こせないだろう?」と主張しています。しかしながらなかなか聞いてもらえない現状です。
 
 静岡では浜岡原発運転差止め訴訟が起きています。さらには筑紫哲也さんがニュース23の中で発言をされました。私たちも発言して行くつもりです。そして世論を何とか喚起していくことによって流れを変えて行きたい。この問題に対する関心がまだ低いのは残念なことです。自分の本でも書いていますが、この問題は静岡県だけの問題ではなく、日本全土の問題であり、我々の世代だけの問題ではなく、今後の世代の問題でもあります。これ以上無責任な行政、企業運営は許されないと思っています。是非、ご理解を得て、この問題で世の中の関心を高めて頂きたいと思います。
 

中村 敦夫 参議院議員

 
 私は日本で最初の環境を守る政党として「みどりの会」を立ち上げました。私は遅すぎると思っていますが、今の日本の政界には早すぎるらしいのです。経済成長を続ける限りは石油が必要ですが、石油の採掘可能年は後45年です。ですから原発というわけですが、我々には貪欲な経済成長はもういらないと思っています。今は知足の経済が必要です。現在の体制を「競争」から「協力」へ移行し、「節約」という概念を取り入れ、自然に対してもっと感謝する経済概念の転換が必要であり、企業も政治もそちらに向かうべきです。

 原発はこれらの理念に逆行するものです。大事故が起これば、浜岡原発は間違った方向性を示す最初の事象となってしまう可能性もあるのです。しかし、まだ危機感が日本で浸透していません。

 今日は社会の責任ある立場で働いていた人々が立ち上がってくれたことに、心強さを感じています。
 

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