朝日新聞名古屋本社版(2004/10/12)

 
検証 浜岡原発 2


老朽化の影響、予測困難


 先月17日、中部電力は浜岡原子力発電所1、2号機の「シュラウド」(炉心隔壁)の取り換えを発表した。「多数のひび割れが見つかった」というのが理由だ。
 シュラウドは原子炉内の主要部品。約30トンもあるステンレス製円筒で、設計段階では交換を想定していなかった。1基百数十億円かけ、2年近く原発を止める大工事になる。
 1号機の運転開始は76年。老朽化が一因で8月に5人が死亡した配管破裂事故を起こした関西電力美浜3号機と同じだ。2号機は78年。当初30〜40年とされていた寿命に近づいている。

 老朽化に加えて1、2号機には別の気がかりもある。東海地震が真下で起きるとわかっていない時代に設計されたので、想定している揺れが、3号機以降より小さい。

 ゼネコンで原発設計をしていた福和伸夫名古屋大教授(地震防災)は「1、2号機は出力が小さく運転効率も高くない。廃炉にして、より安全性の高い新型のものに作り直した方がいい。安全を保つ技術者の継承にもつながる」と指摘する。
 「廃炉はありません。大切な発電施設ですから」。中電は9月17日の記者会見で説明した。

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 昨年3月、東京大学で開かれた日本原子力学会の会合。
 「人知の及ばないことが起こりうる」
 東京電力の技術者はこう述べた。一昨年、東電の原発トラブル隠しの原因になったひびについての説明だった。
 「ひび割れを起こさない」と考えられていた改良型のステンレスで起きたためだ。浜岡1、2号機が交換する新しいシュラウドもこの材料が使われる。

 8月末、住民が国に対し、東電・柏崎刈羽原発1号機の設置許可取り消しを求めた東京高裁の裁判で、井野博満・東大名誉教授(金属材料)は同様のひび割れについて「新しい、未知のメカニズムが原因」と陳述した。
 「老朽化に伴い、腐食や疲労が複合した予測が難しい故障の要因が増えてくるだろう」と井野さんは心配する。

 中電は「これまでの検証で、1、2号機も3号機以降と同等の耐震性があることが確かめられている」と説明している。ただし、機器や配管に新品時と同じ性能が保たれていることが前提だ。

 腐食によるひび割れや配管が薄くなるなど、老朽化の影響を考慮した上で耐震性を確かめる報告書を、1号機については来年、国に提出する。

 原子力情報センター事務局長の舘野淳・中央大教授は「原発は精密機械。老朽化した配管類を、設計より厳しい地震が襲った時、本当にシステムとしての安全が保たれるのか。厳しい検証が求められる」と話している。