朝日新聞名古屋本社版(2004/10/13)

 
検証 浜岡原発 3


運転停止求め署名集め

 島根県鹿島町で7月21日、町にある中国電力島根原子力発電所の3号機増設計画について住民の意見を聞く第2次公開ヒアリングが開かれた。

 「地震と原発(事故)の同時災害に見舞われる恐れがある。安全に避難できるのか」

 同町議の安達久美子さん(56)は、原子力安全・保安院の担当者に問いただした。

意見を述べた18人のうち8人が地震の問題を取りあげた。最も関心が集中したテーマだった。「十分な耐震性がある」。原子力安全・保安院の担当者は繰り返した。

 1号機の設置許可申請が出された69年以来「ない」とされてきた活断層が98年、島根原発から約2キロの地点で見つかった。専門家の調査で活断層の存在 が指摘されたのがきっかけだった。巨大地震を起こすプレート境界が真下にあることが後から判明した浜岡原発と事情が似ている。

 愛媛県伊方町の四国電力伊方原発2号機では、住民が国を相手取り、設置許可取り消しを求めて78年に提訴した。裁判は22年6カ月間にわたった。特に阪神大震災以降、伊方沖の活断層の危険性と原発の耐震性が主な争点となった。

 00年12月、松山地裁は、「国の安全審査に落ち度はない」と訴えを棄却しながらも、活断層については「その後の研究結果からみて、安全審査当時の国判断は誤りであったことは否定できない」とした。

 原告の一人、地域紙編集発行人の斉間満さん(61)は「伊方沖に活断層が隠れていることは、訴訟がなければ明らかにならなかった。国も地震に対する不安は持っていたようだ」と話す。

 耐震安全性が争点となっている訴訟は、主なものだけで六つの原発で続いている=。浜岡原発でも昨年、市民団体が運転差し止めを求める訴訟を起こした。

 浜岡原発1号機で01年に起きた配管破断事故以降、「1、2号機の廃炉を」(静岡県吉田町)、「1、2号機の休炉を」(同県掛川市)などの意見書提出が相次いだ。

 昨年9月には、東海地震強化地域にある長野県中川村などが一刻も早い全基の停止を求める意見書をまとめたほか、6月には、東京都武蔵野市が「浜岡原発震災を未然に防ぐ措置を」という意見書を総理大臣に送った。

 市民団体「原発震災を防ぐ全国署名連絡会」(静岡市)は「東海地震の前に浜岡原発の運転停止を」と訴える署名運動を始め、8月末までに約25万人分を集めた。目標は来年3月までに100万人。国に法整備を働きかけたいという。

 連絡会の事務局長、古長谷(こながや)稔さん(33)は「原発そのものに反対しているのではない。直下で巨大地震が想定される浜岡という特別な場所では、運転を止めてほしいというのが趣旨だ」と話している。



◇◇ 耐震性が争点になっている主な原発訴訟 ◇◇


●原発名
被告
請求内容
経過


●東海第二

設置許可取り消し
73年提訴。85年請求棄却。同年原告控訴。01年請求棄却。同年原告上告


●柏崎刈羽1号

設置許可取り消し
79年提訴。94年請求棄却。同年原告控訴


●もんじゅ

設置許可無効確認
85年提訴。03年名古屋高裁金沢支部で無効確認。同年被告上告受理の申し立て


●島根1、2号
中国電力
運転差し止め
99年提訴


●志賀2号
北陸電力
建設差し止め
99年提訴


●浜岡1〜4号
中部電力
運転差し止め
03年提訴