朝日新聞名古屋本社版(2004/10/15)

 
検証 浜岡原発 4


断層めぐり米でも論議


     

海岸沿いに立つ原発は浜岡原発ともよく似た立地だ=米サンルイスオビスポ郡で、PG&E社提供



 「大地震が起きた時、原発は大丈夫か」。米国でも浜岡原発と同じような議論が起こっている。

 米カリフォルニア州ロサンゼルスから北西へ約300キロのサンルイスオビスポ郡。山地が連なる海岸沿いに、パシフィック・ガス・アンド・エレクトリック(PG&E)社の原発「ディアブロキャニオン」は立つ。

 加圧水型2機で220万キロワットを発電、同州の200万人分の電力を供給する。同社のジェフ・ルイス報道担当は「全米の原発で地震部門があるのはここだけ。専属の研究者19人が世界中の地震情報を集め、研究している」と説明する。

 太平洋プレートと北アメリカプレートの境界近くで、活断層も近くに走る=。「安全性が疑問」と約2千人の逮捕者が出た大規模な反対運動が起きた。84年には、住民団体の全面運転差し止め仮処分申請が連邦最高裁で認められ、差し止め命令が出た。しかし、3カ月後、命令は取り消され運転を許可。反対運動は今も続いている。

 郡内のあちこちに原発事故を知らせるため、「3分サイレンが鳴ったらラジオをつけて下さい」と張り紙がある。昨年12月、約80キロ離れた場所を震源に起きたサンシメオン地震(M6・5)では、同原発は発生から十数分で「原発に影響は無い」と安全宣言を出した。
 近くに住むデビッド・ウェイスマンさんは「揺れが収まった後、まずサイレンが鳴らないか耳を澄ませた」と話す。

 「一番の話題は原発の建て替え問題です」。反対運動の中心となる住民団体「マザーズ・フォー・ピース」(MFP)のエレイン・ホルダー副代表は説明す る。運転開始から約20年がたつ原発は老朽化、PG&E社は建て替え費用をまかなうため料金値上げを州公益事業委員会(CPUC)に申請。現在、事前ヒア リングの真っ最中だ。

 MFPは「地震の危険があり、建て替えは危険」と、5キロ沖の海中にあるハズグリ断層と周辺に焦点をあてる。

 MFPによると、原発は横ずれ断層に対応して設計されているが、ハズグリ断層周辺は縦ずれ断層がある可能性もある。サンシメオン地震はこれまで知られて いなかった縦ずれ断層で起きた。94年のノースリッジ地震などここ十数年の大きな地震はいずれも隠れた縦ずれ断層で起きている。

 未知の縦ずれ断層がディアブロ付近にあってもおかしくない、とMFPは主張。同社側は「電気料金値上げの可否を決める場で、地震の危険度を論議する場で はない」とすれ違ったままだ。ルイス報道担当は「ハズグリ断層ではM7・2の地震が想定されているが、M7・5にも耐えうる設計だ」と強調する。

 来年にもCPUCの結論が出る。ホルダーさんは言う。

 「何が起きているかを知ったり、内部告発者の声に耳を傾けたり、施設の危険を取り除くよう要求したりするのは、ディアブロキャニオンのような危険の近くに住む人たちにしかできません」